【相続のイロハ(第16回)】 相続財産(家屋)の評価方法 ~自用家屋・貸家~

 前回までの”土地”に続いて、今回は”家屋”の評価方法について解説していきます。

 と言っても、家屋の場合は土地ほど煩雑ではありません。

 

 まず家屋は、原則”1棟の家屋”を評価単位として評価することになっています(財産評価基本通達88)。

 そして、家屋については、”自用家屋”(ご自身で利用している家屋)・”貸家”(他人に貸し付けている家屋)の区分に応じて、各々次のような方法で評価します(財産評価基本通達89、93)。

 

 【自用家屋】     固定資産税評価額 × 1.0

 【貸家】        自用家屋の評価額 × (1 – 借家権割合 × 賃貸割合

 

 固定資産税評価額は、土地(宅地)の場合と同様に、その年分の固定資産税納税通知書(課税明細)等に記載されている数値を使用するか、家屋の所在する市区町村に評価証明を発行してもらいます。

 また、”借家権割合”及び”賃貸割合”は、前々回(第14回)にご説明したものと全く同じものになります。

 

 法人税・所得税や財務会計の世界では、通常、建物の価値は”帳簿価額”、即ち取得価額から時の経過と共に減価した部分(減価償却累計額相当額)を控除した金額で評価することが殆どですが、相続税・贈与税における財産評価は”固定資産税評価額”をベースに行います。

 このため、仮に取得してから50年以上経って殆ど価値がないような家屋であっても、評価額はゼロ(もしくは極めてゼロに近い値)にはなりません。

 また、家屋を新築又は購入した後に相応の増改築(リフォーム)を行ったものの法務局や市区町村への届出が行われていない場合、その増改築部分は固定資産税評価額に反映されていないのが通常ですから、その場合は固定資産税評価額に所定の算式に基づいて計算した増改築部分の評価額を加算する必要がありますのでご注意下さい。

 

 ちなみに、家屋に関連するものとして、お屋敷のようなお宅には立派な門・塀や庭園設備が備わっている場合がありますが、それらは家屋とは別に各々相続財産として評価が必要になることがあります(財産評価基本通達92(2)・(3))。

 また、ご自宅を建築中に相続が発生してしまった場合、建築が完了しておらず登記も未了のため固定資産税は未だ課されていませんから、当然固定資産税評価額はありません。

 このような場合は、例外的に課税時期(相続開始時)までに家屋建築に投下した費用の額を課税時期の価額に引き直した額(費用現価)の70%で評価することになっています(財産評価基本通達91)。

 

 いずれにしましても、上記算式の通り、家屋についても土地(宅地)と同様にご自身で利用されているよりも他人に貸し付けた方が評価額が相当程度低くなるわけですが、やはり家屋を他人に貸し付けるにも相応のコスト負担とリスクを伴いますので、節税対策として考えられる際にはその辺りの事もよく比較衡量されることをお勧めします。