今回から上場株式や公社債等の”有価証券”の評価方法について解説していきます。
まず最初は”株式”についてです。
株式(又は株式に関する権利)の価額は、”銘柄の異なる毎”に、次に掲げる区分に従い、”1株又は1個”を評価単位として評価します(財産評価基本通達168)。
①上場株式
②気配相場等のある株式
③取引相場のない株式
④株式の割当てを受ける権利
⑤株主となる権利
⑥株式無償交付期待権
⑦配当期待権
⑧ストックオプション
⑨上場新株予約権
この中でも、今回は最も一般的な”上場株式”について説明することにします。
上場株式とは、東京・大阪・名古屋など全国の金融商品取引所のいずれかに上場されている株式をいいますが、上場市場は各取引所の第1部・第2部は勿論のこと、新興企業市場であるJASDAQやマザース等も含まれます。
上場株式は、原則、その株式が上場されている金融商品取引所における課税時期(相続開始時)の”最終価格”によって評価します(財産評価基本通達169(1))。
但し、一時的な株価の高騰・急落が課税価格に反映されることを避けるため、その価格が課税時期の属する月以前3ヶ月間の毎日の最終価格の各月毎の平均額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額で評価して良いことになっています。法律条文や通達の表現はいつも分かり難いですよね。
つまり、
● 課税時期の最終価格
● 課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額
● 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
● 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
の4つのうち、”最も低い価額”で評価するということです。
2以上の金融商品取引所に上場されている株式については、納税義務者(相続人)が選択した金融商品取引所の価格(低い方)で評価することが出来ます。
また、課税時期が休日等で取引がなく最終価格がない場合は、課税時期の前日以前又は翌日以後の最終価格のうち、課税時期に最も近い日の最終価格(課税時期との日数差が前後同じときはその平均額)が課税時期の最終価格になります(財産評価基本通達171(1))。
尚、負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得した株式の場合は、その株式が上場されている金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格によってのみ評価し、課税時期の属する月以前3か月間の毎日の最終価格の月平均額は採用できませんのでご注意下さい(財産評価基本通達169(2))。
ちなみに、この課税時期の最終価格や月平均額、日刊紙やインターネット(Yahooファイナンス等)でも調べることが出来ますが、実務的には預貯金と同様、生前被相続人が取引をされていた証券会社に発行してもらう相続開始時点の”残高証明書”に、課税時期の属する月以前3か月間の毎日の最終価格の月平均額を記載してもらうよう依頼すれば事足りますので、預貯金と合わせて覚えておかれると宜しいかと思います。
最後に、上場株式で一点注意を要するのは、相続開始の時期がたまたま株式割当や配当金交付の基準日や権利落ちの日の前後に該たる場合、そのタイミングに応じて最終価格(あるいはその平均額)の調整を行ったり、冒頭に掲げた株式に関する権利④~⑦のいずれかを評価しなければならないことがあるという点です。
そのような場合には、ご自身で判断されるのではなく、税理士に一度ご相談・確認されるようにして下さい。