早いもので今年も早2か月が過ぎ、3月に入って大分暖かくなってきましたね。
年明けからの緊急事態宣言の効果もあってか新型コロナウイルスの新規感染者数はかなり減少し、先月から日本でもようやくワクチン接種が始まって、少しづつですがコロナ終息に向けて光が差してきたような気がします。
東京オリンピック・パラリンピックは正直この際どうでも良いので、このまま無事にコロナが終息して社会経済や日常生活が普段通りに戻ってくれることを願うばかりです。
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さて、今回は最近の相続税の申告状況と税務署による調査状況についてお話したいと思います。
平成27(2015)年に改正相続税法が施行されて丸6年が経過し、当初は課税割合(相続税の申告書が提出された被相続人の数/1年間に亡くなられた方の数)がそれまでの4%から8%に倍増されたことばかりに注目が集まりましたが最近はどうなっているのでしょうか?
毎年12月に国税庁から前年(前事務年度)分の「相続税の申告事績の概要」と「相続税の調査等の状況」の2つが公表されます。
前者は前年に発生した相続に関して提出された相続税の申告がどのような内容であったかを整理・分析したもので、被相続人の数や課税割合、徴収税額、相続財産の構成割合などが示されています。
直近の令和元年分(令和元年11月1日~令和2年11月2日の間に申告書が提出されたもの)によると、
①1年間で亡くなられた方(被相続人)の数は毎年緩やかに増加傾向
②申告書が提出された被相続人の数は前年に比べて僅かに減少(コロナウイルスの影響?)
③結果として課税割合(②/①)は僅かに減少したものの改正以降は8%台前半で推移
④徴収税額は総額・被相続人1人当たりともに特に大きな変化はなし
⑤相続財産の構成割合は土地が年々減少する一方、現金・預貯金が年々増加する傾向
といったことが分かります。
相続税法改正で基礎控除額が一律40%削減されたことによって相続税の課税対象者が大幅に増加し、課税割合がどこまで上がるかを個人的には心配していましたが、その後も概ね8%で推移しておりこの傾向はしばらく変わらなそうです。
一方、後者は前年度に税務署が相続税に関して行った税務調査の結果がどのようなものであったかを整理・分析したもので、調査件数や申告漏れ等の非違割合、追徴税額などが示されています。
また、実地調査(いわゆる税務調査)の他に、文書・電話等の簡易な方法で実施した調査(簡易な接触)や無申告事案に対する調査、贈与税に関する調査の結果なども含まれています。
直近の令和元事務年度によると、
①相続税の実地調査件数は前年に比べてかなり減少(明らかにコロナウイルスの影響)
②しかし非違割合(調査対象のうち申告漏れ等による差異が認定された割合)は殆ど変わらず
③追徴税額の総額は減少するものの1件当たりの追徴税額はむしろ増加
④簡易な接触や無申告事案についても実地調査とほぼ同じ傾向
⑤海外資産に係る調査件数は減少するものの非違件数は年々増加傾向
⑥贈与税の実地調査件数も減少するものの追徴税額は総額・1件当たりともにかなり増加、また現金・預貯金が調査対象財産の約75%を占める
といったことが分かります。
納税者と室内で直接面談を行う実地調査は、感染防止対策として3蜜を避けるためにはやはり件数自体を抑える他なかったようです。
しかし、そこは税務署も簡易な接触で補完しつつ、実地調査を悪質なケースや重要事案に絞り込むことによって、非違割合を維持するとともに1件当たりの追徴税額を増加させる結果になったものと思われます。
また、ここ数年は明らかに海外資産に関する監視・調査が強化されていて、海外の課税当局との情報交換やCSR情報(共通報告基準に基づく⾮居住者⾦融口座情報 )を積極的に活用することで、特に富裕層の海外資産の把握・課税を徹底して行っていることが⑤からも窺えます。
更に、相続税法改正以降、相続対策として生前贈与を活用するケースがかなり増えていることから、当然その点に対する課税当局の関心も高まっていることがよく表れています。
このように、相続税法改正によっても課税割合が8%程度に収まっていることは一つの安心材料ですが、最近の相続対策や社会環境の変化に課税当局も積極的に対応していることから、納税者としては被相続人の生前から計画的かつ着実に対策を行うとともに、申告の際は事実に基づいて正確かつ誠実に対応することがより一層求められてくるでしょう。