今回から数回にわたって「相続財産の評価方法」について解説していきます。
前回まででどういったものが相続財産になるかについては理解していただけたと思いますが、その財産をどのように評価するのかが分からなければ、相続又は遺贈により取得した財産の価額(課税価格)が計算できませんし、ひいては相続税額も計算することができません。
また、相続財産を幾らで評価するのかによって相続税額も大きくなったり小さくなったりしますから、相続税額の算定において財産評価は極めて重要な意味を持っています。
では相続税法にはどうように定められているかと言うと、ごく一部のものを除いて「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における”時価”により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。」(相続税法22条)という原則が規定されているだけで、詳細には定められていません。
そのため、国税庁では”財産評価基本通達”というものを個別に定め、財産の評価方法に共通する原則や各財産の評価単位毎の評価方法を具体的に規定しています。
それによると、”時価”とは「課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額はこの通達の定めによって評価した価額による。」(財産評価基本通達1)とされています。
また、「この通達に評価方法の定めのない財産の価額は、この通達に定める評価方法に準じて評価する。」(財産評価基本通達5)とも定められています。
つまり、財産の価額は相続開始時における市場取引価格によることを原則として、具体的には財産の種類毎に当該通達で定める通り、又はそれに準じて評価するということです。
そして財産の種類としては以下のものがあり、各々評価単位と評価方法が定められています。
(1)土地及び土地の上に存する権利
①宅地 ②農地 ③山林 ④原野 ⑤牧場 ⑥池沼 ⑦鉱泉地 ⑧雑種地
(2)家屋及び家屋の上に存する権利
(3)構築物
(4)果樹等及び立竹木
(5)動産
①一般動産 ②たな卸商品等 ③牛馬等 ④書画骨董品 ⑤船舶
(6)無体財産権
①特許権 ②実用新案権 ③商標権 ④著作権、出版権及び著作隣接権
⑤鉱業権及び粗鉱権 ⑥採石権 ⑦電話加入権 ⑧漁業権 ⑨営業権
(7)その他の財産
①株式及び出資 ②公社債 ③定期金に関する権利 ④信託受益権
⑤その他の財産(預貯金・貸付金・受取手形・ゴルフ会員権・生命保険契約に関する権利等)
この中でも極めて一般的で、国税庁の統計で相続財産の金額構成でも毎年約90%を占める
①土地 ②家屋 ③現金・預貯金 ④有価証券(株式・公社債)
の4つを中心に次回以降詳しく解説していきたいと思います。