前回は株式(特に、上場株式)について解説しましたが、今回は公社債その他の有価証券の評価方法について説明します。
(1)公社債
”公社債”とは、国や地方公共団体が発行する国債・地方債、民間企業が発行する社債などを合わせた債券の総称ですが、これらの債券にも券面額の他に利札(利息)の付いている債券(”利付公社債”)と、券面額を下回る価格(利息相当分を割り引いた価格)で発行された債券(”割引発行の公社債”)などがあり、それぞれで評価方法が次のように異なります。
①利付公社債(財産評価基本通達197-2)
公社債の評価額 =
{ 課税時期の市場価格 + (課税時期における既経過利息の額 - 源泉徴収税額) } × 券面額 / 100円
②割引発行の公社債(財産評価基本通達197-3)
公社債の評価額 = 課税時期の最終価格 × 券面額 / 100円
ここで、課税時期の市場価格又は最終価格は、金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格又は日本証券業協会の公表する課税時期の平均値のいずれか低い方をいいます。
この課税時期の平均値には、前回の上場株式の様に前月・前々月の平均値を比較・採用することは出来ませんのでご注意下さい。
また、2以上の金融商品取引所に上場されている場合、原則、東京証券取引所の価格を採用しますが、納税義務者(相続人)が納税地の最寄りの金融商品取引所の価格(低い方)を選択することも出来ます。
更に、課税時期が休日等で取引がなく最終価格又は平均値がない場合は、課税時期の前日以前の最終価格又は平均値のうち、課税時期に最も近い日の最終価格又は平均値が比較対象の価格になります。
これらの点も上場株式の取扱いとは若干異なりますで注意が必要ですが、前回同様、実務的には証券会社から発行してもらう”残高証明書”に記載してもらう方が正確かつ効率的です。
(2)証券投資信託(受益証券)
”証券投資信託”とは、信託財産を委託者の指図に基づいて株式を主体とする特定の有価証券に対する投資として運用することを目的とする信託をいい、古くは中期国債ファンド等が代表的なものでしたが、最近では金融機関各社から様々な商品が出されており、保有されている方も多いのではないかと思います。
証券投資信託にも、日々決算型のものとそれ以外のもので次のように評価方法が異なります(財産評価基本通達199)。
①日々決算型
受益証券の評価額 = 1口当たりの基準価額 × 口数 +
(再投資されていない未収分配金 - 源泉徴収税額) - 信託財産留保額及び解約手数料
②①以外
受益証券の評価額 = 課税時期の1口当たりの基準価額 × 口数 -
課税時期に解約等した場合の源泉徴収税額 - 信託財産留保額及び解約手数料
尚、②の場合で課税時期が休日等で取引がなく基準価格がない場合は、課税時期の前日以前の基準価格のうち、課税時期に最も近い日の基準価格が課税時期の基準価格になります。
証券投資信託の場合も、やはり金融機関から”残高証明書”を発行してもらうようにしましょう。