課税価格の合計額がプラスとなるため相続することとし、基礎控除額を差し引いても課税遺産総額が生じる場合は相続税額を計算することになります。
しかし、相続税額は課税遺産総額に単純に相続税率を掛けて計算するわけではありません。
一旦、課税遺産総額を仮に”法定相続人”が”法定相続分”に応じて相続したとした場合の”相続税の総額”を計算した上で、その総額を各相続人が実際に取得した財産価額の割合に応じて按分計算することで税額を求めます(相続税法11条・16条・17条)。
相続人が実際に取得した財産の価額にそのまま税率を乗じて相続税額を計算してしまうと、財産の分割方法如何で最終的に支払う相続税額が異なってしまうという不合理が生じるため、多少煩雑にはなりますが上述したような二段階で計算を行うことになっています。
”法定相続人”については既に第1回~第3回で解説していますので、今回は”法定相続分”について説明することにします。
”法定相続分”とは、民法が目安として定めている相続順位・相続人毎の相続割合をいい、以下の通りに決められています(民法900条)。
相続順位 | 相続人 | 法定相続分 |
第1順位 | 配偶者 | 1/2 |
子 | 1/2 | |
第2順位 | 配偶者 | 2/3 |
直系尊属 | 1/3 | |
第3順位 | 配偶者 | 3/4 |
兄弟姉妹 | 1/4 |
尚、配偶者以外の子又は直系尊属(父母・祖父母等)、あるいは兄弟姉妹が各々複数いる場合は、その相続分を人数で均等按分したものが各人の相続分になります。例えば、相続人として配偶者の他に子供が2人(A・B)いる場合は、法定相続分は配偶者が1/2、子供A・Bが各々1/4ということになります。
また、子及び兄弟姉妹にはその代襲相続者(孫や甥・姪等)も同等の地位にある者として含まれます。
ちなみに、昨今新聞等でも話題になりましたが、正式な婚姻関係外のもとに出生した子(非嫡出子)の法定相続分が、以前は正式な婚姻関係のもとに出生した子(嫡出子)の1/2とされていましたが最高裁で違憲との判決が下ったことを受けて、平成25年9月5日以後に新たに相続税額が確定する場合は非嫡出子の法定相続分も嫡出子と同等として取り扱われることになりました。
この法定相続分に基づいて課税遺産総額を法定相続人で一旦按分し、按分した価額に応じた相続税率を各々乗じて計算した税額をすべて合計したものが”相続税の総額”です。
そしてその”相続税の総額”を、各相続人が実際に取得した財産価額の割合に応じて按分した金額が”相続人毎の相続税額”になります。
このように計算すれば、実際財産をどのように分割したとしても、相続人各人の相続税額は変わりますが、相続人全員で支払う相続税の総額は変わらないというわけですね。