今年も早1か月が過ぎ、2月に入り直に確定申告期が始まろうとしていますが、皆さん準備はお済みでしょうか?
毎年この時期は、年末に与党から公表された新年度の税制改正大綱案が閣議決定の後、年明けの通常国会で審議・決定されるというのが通例行事となっています。
今年の改正案には、働き方改革の流れを受けた”サラリーマンの給与所得控除や高齢者の公的年金等控除の引き下げ”といった個人所得課税の見直しを筆頭に、デフレ脱却と経済再生に向けた法人課税の”所得拡大促進税制の改組”、中小企業の代替わりを促進する”事業承継税制の拡充”等、様々な項目が盛り込まれていますが、その中でも相続に関連するところで最も目を引くのが”「小規模宅地等の特例」の適用要件の見直し”です。
この適用要件は、平成26年・平成27年と立て続けに改正がなされたばかりですが、今国会で了承・可決されれば今回また別の部分で新たに見直しがなされることになります。
その一つが、特定居住用宅地等に該当する宅地等を相続開始時に被相続人とは別居していた親族が相続した(又は遺贈を受けた)場合、いわゆる”家なき子”の一部適用除外です。
「小規模宅地等の特例」(租税特別措置法69条の4)は、例えば、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族が居住の用に供していた宅地等(特定居住用宅地等)を、配偶者又は一定の要件を満たす親族が相続した(又は遺贈を受けた)場合に限り、相続税額の計算上その宅地等の評価額を80%減額しても良いというものですから、適用できるのであれば必ず適用した方が良い特例の一つです。
この特例が適用できる配偶者以外の親族には、
①同居親族
②別居親族
③生計一親族
の3つがありますが、少子高齢化と人口の東京一極集中によって高齢者の独り暮らしが増加している現在、親から独立して離れた場所で自分の家庭を築いている子供も多く、その子供(又はその配偶者)が相続開始前3年以内にマイホームを所有していると、現行の要件では①・③は勿論のこと、②にも該当しないため本特例を適用できないというケースが往々にしてあります。
そこで、親の生前に自己が所有するマイホーム(家屋)を自分の子供(親からすれば孫)等に贈与することで、結果的に自己又はその配偶者の所有する家屋には3年間居住したことがないものとして本特例を適用して申告する者がここ数年相当数いたようです。気持ちは分からなくもありませんが…^^;)。
このような租税回避を排除すべく、今回の改正案では別居親族の範囲から次の者を除外するとしています。
①相続開始前3年以内にその者の3親等内の親族等が所有する国内にある家屋に居住したことがある者
②相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者
もう一つこの特例の関係では、貸付事業用宅地等(賃貸不動産の敷地等)の対象についても、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等(但し、3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者が当該貸付事業の用に供しているものを除く)を除外するとしています。
いわゆる節税対策として相続開始の直前に不動産投資・賃貸を行っていた者(の相続人・受遺者)にまで本特例の恩恵を享受させるわけにはいかないということなんでしょうね。
いずれも平成30年4月1日以後の相続・遺贈から適用になりますが、今回の改正で影響を受ける方はかなり多いのではないでしょうか。